【詳細】イスラエル・パレスチナ・中東情勢(5月16日)

パレスチナのガザ地区への攻撃を続けるイスラエルのネタニヤフ首相は、多くの住民が身を寄せる南部ラファでの作戦について、「数週間で終わる」と述べ、アメリカが懸念を示す中でも強行する構えを示しました。

※中東情勢に関する日本時間5月16日の動きを随時更新してお伝えします。

“ラファ軍事作戦で60万人が避難” 国連機関推計

イスラエル軍がガザ地区の北部や南部で攻撃を続ける中、イスラエルメディアは16日、軍が南部ラファに追加の部隊を配置したと伝えていて、イスラエル軍が今後、ラファでの作戦を拡大するための動きの一環だとしています。

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は15日、5月6日からのイスラエル軍の作戦を受けて推計で60万人がラファからの避難を強いられたとしています。

また、国際的な人権団体アムネスティ・インターナショナルなどは15日「イスラエル軍のラファ侵攻で人命を救うための機能は完全に崩壊するだろう」と指摘し「すべての国は即時停戦の実現に向け行動しなければならない」とする声明を出しました。

パレスチナ人数千人 故郷に帰る権利と停戦訴え大規模デモ

ヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区ラマラでは15日、1948年のイスラエルの建国に伴って多くのパレスチナ人が住んでいた土地を追われ難民となった「ナクバ=大惨事」の日から76年になるのにあわせて、数千人が参加して大規模なデモが行われました。

ガザ地区の現状を「ナクバ」になぞらえる人もいて、集まった人々はかつて暮らしていた土地に帰る権利を訴えるとともに一刻も早い停戦を求めて声をあげていました。

参加した男性は「ガザ地区での破壊の規模を見ればイスラエル軍がガザ地区を人が住めない状態にしているのは明らかだ。これは新たな『ナクバ』だ」と訴えていました。

米軍 ガザ海岸に仮設桟橋を設置 “支援物資を数日以内に搬入”

アメリカ軍はイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘で深刻な人道状況が続くガザ地区に、海上から支援物資を搬入するための仮設の桟橋が設置されたと発表しました。

アメリカ中央軍は16日、「現地時間の午前7時40分ごろ、ガザ地区の海岸に仮設の桟橋を固定した。支援物資を積んだトラックは数日以内に上陸を始める予定で国連が支援物資を受け取り、配付を行う予定だ」と明らかにしました。

また、設置にあたり、アメリカ軍はガザ地区には入っていないとしています。

この計画について、アメリカのバイデン大統領はことし3月に行った一般教書演説の中で、「ガザ地区に入る支援物資の量を大幅に増やすことができる」などとしていました。

ただ、アメリカのCNNテレビは、「天候や海の状況によっては使用が大幅に制限される可能性もある」と伝えています。

“国連施設でハマスが活動” 国連「真偽確認できず」

イスラエル軍が、南部ラファにある国連施設でハマスの戦闘員の活動が確認されたとする映像を公開し国連に調査を求めたことについて、国連の報道官は15日、現段階でイスラエル軍から情報の提供はないと明らかにし「映像の撮影時期や正確な場所について情報を持っておらず、映像の真偽や内容を確認できない」と述べました。

その上で、公開された映像は、イスラエル当局の退避通告に従って国連職員が退避した後に撮影された可能性が高いという見方を示しました。

ネタニヤフ首相“ラファでの作戦 数週間で終わる”

イスラエル軍は15日にかけて、ガザ地区のおよそ80の標的を空爆し、南部ラファや北部ジャバリアでの地上作戦でイスラム組織ハマスの戦闘員を多数殺害したと主張しました。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、北部のガザ市で国連機関の診療所が砲撃を受け少なくとも10人が亡くなったほか、インターネットの接続を求めて市民が集まっていた中心部への攻撃で多くの死傷者が出ていると伝えています。

ガザ地区の保健当局は15日、犠牲者は3万5233人に上ったとしています。

こうした中、イスラエルのネタニヤフ首相はラファでの作戦について、アメリカの経済チャンネルCNBCのインタビューで「アメリカと意見の相違はあるものの、自分たちの生存と将来を確保するため、必要なことをしなければいけない。数か月や数年ではなく、数週間で終わる」と述べ、現地を拠点とするハマスの4つの大隊を壊滅させる必要性を強調しました。

多くの住民が身を寄せるラファをめぐって、アメリカのバイデン大統領は、イスラエルが大規模な地上作戦を行った場合は砲弾などを供与しないと警告しています。

パレスチナ難民「ナクバ」の日 故郷に帰る権利を訴えるデモ

1948年のイスラエルの建国に伴い、パレスチナ人が住んでいた土地を追われ難民となった「ナクバ=大惨事」の日から76年となり、多くのパレスチナ難民が暮らす中東のヨルダンでは、故郷に帰る権利を訴えるデモが行われました。

1948年のイスラエル建国に伴って多くのパレスチナ人は、それまで暮らしていた土地を追われ各地で難民となったため、パレスチナの人々はイスラエル建国の翌日にあたる5月15日を、アラビア語で「大惨事」を意味する「ナクバ」と呼んでいます。

230万人以上のパレスチナ難民が暮らすヨルダンでは、「ナクバ」の日にあわせて15日、首都アンマンの広場で若者など100人以上が集まり、イスラエルに対する抗議デモが行われました。

デモの参加者は、パレスチナの旗や、かつて追われた家の鍵を掲げ、「パレスチナに自由を」とか「故郷に必ず帰る」などと声を上げていました。

デモに参加した30代の女性は「ここにいる多くの若者がパレスチナに住んだことも、行ったこともない。でも、私たちは1948年からきょうまでナクバの話を祖父などから受け継いできた。これからも帰還の権利を求めていく」と話していました。

バイデン政権 イスラエルに10億ドル以上武器売却方針 米メディア

アメリカの複数のメディアは、バイデン政権がイスラエルに対して戦車用の砲弾や戦闘用車両など、総額10億ドル以上、日本円にして1550億円以上の武器を売却する方針を議会に通知したと伝えました。

バイデン政権はイスラエルによるガザ地区南部ラファへの大規模な地上作戦に反対し、弾薬の輸送を一部、停止したことを明らかにしたばかりです。

ホワイトハウスのジャンピエール報道官は15日、記者会見で「われわれはラファでの大規模作戦に懸念を表明してきた。一方で、イスラエルの安全保障への関与は揺るぎなく、イスラエルが防衛に必要なものを手にすることができるようにしたいと常に表明してきた」と述べ、イスラエルの防衛を支援していく姿勢に変わりはないと強調しました。

アメリカのメディアは今回の武器売却の方針についてラファへの大規模な地上作戦をめぐりイスラエルとの間の溝をこれ以上、深めたくないバイデン政権側の考えの表れだと指摘しています。